ホンスミブログ
| 2007-11-09 |
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| 玉くしげ()
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![]() 玉くしげ - 美しい国のための提言 [現代語訳 本居宣長選集]
書評/社会・政治 ![]() ![]() 本居宣長の門下にあり、『活語断続譜』を著した鈴木朖の学会に赴いた。梅雨の走り、6月のことである。学会は、鈴木朖の子孫の方が数十年に渡って私費で開催されているという。場所は名古屋の中心地に程近いところである。「誰が行っても歓迎してくれる」ということで、もとより言語学は門外漢なのだが興味本位で訪れた。だが、これが思いのほか印象深いものであった。 学会の講演は二部構成となっており、第一部は名古屋市博物館の学芸員・桐原千文氏によって鈴木朖の来歴が語られた。尾張藩士として、どのような仕事を成していたかを解説していただく。第二部では、愛知県立大学名誉教授であり、宣長研究の第一人者である尾崎知光(おざき・さとあきら)氏が、時枝誠記博士の思い出を語られた。時枝といえば「時枝文法」で知られる日本を代表する言語学者であり、尾崎先生はその弟子にあたられる。 昭和四十二年――ガンで亡くなるその年の6月、時枝博士は来名し、「朖学会」にて講演を行ったという。そのときの講演は「講座 日本語の文法」(明治書院/昭和43年)に記録されているが、末期がんに侵されていることを微塵も感じさせないほどの闊達な喋りで聴衆を魅了したという。 「時枝先生は酒が強かった」「わかったような口を利くものは相手にしないんです」等々、“今日は軽めのお話を…”と断られながらとつとつと、しかし淀みなく語られる尾崎先生のお姿には、ただ真っ直ぐに学問を究めた人のもつ迫力のようなものを感じ、圧倒されるばかりだった。 国語学者の仕事が地味であると書いたのは、『やちまた』の足立巻一で、たしかにそういう面も事実であろう。しかし時枝博士と、それに連なる研究話を語る尾崎先生の表情はとても嬉々とした様子で、言語学がいかにエキサイティングな学問であるかを如実に物語っているように思えた。おそらく尾崎先生は、四十年前の時枝誠記とご自身とを重ねているのではないか――失礼とは思いながらも、そんなことを考えた。 数十年に渡って行われてきた学会の講演は、残念ながら今年を持って最後だという。それを告げるご当主の目には涙が光っていた。没後170年、そして時枝誠記によって再評価されてから80年。鈴木朖の業績を世間に知らしめるため、不断の努力を続けてきたご家族の心境を考えると、とても胸が痛む。学会や基礎研究は今後も継続されるらしい。日本言語学の泰斗が、この名古屋の地に生まれたことを誇りに感じつつ、同時にその事実がやがては風化してしまうであろうことに恐れを抱きつつ、会場をあとにした。 足立巻一も名古屋に調査に赴いており、その場面は『やちまた』にも描かれている。尾崎先生も足立巻一のことはもちろんご存知で、彼の仕事ぶり、性格などを絶賛しておられた。しかしながら、足立巻一は『やちまた』のなかで、時枝博士の〈鈴木朖の国語学史上に於ける位置に就いて〉という論文に疑義を呈している。鈴木朖の『活語断続譜』と、本居春庭の『詞のやちまた』の位置関係についてである。 時枝論文において『活語断続譜』から『詞のやちまた』へと短絡されている点に、足立は納得していない。両者は必ずしも縦の線で直結されるものではない、と足立は考えていたようである。『やちまた』においては、同じく宣長門下の柴田常昭という人物が著した『詞の小車』との関係性も重視すべきであり、その点について足立は〈『断続譜』の前に、あるいは『やちまた』(*)の前に『小車』を置いてみようとしないのだろうか?〉とつづっている。 さて、いささか(というかかなり)前置きが長くなってしまったが、本書についてである。国語学のみならず、幅広い分野で活躍した宣長による社会への箴言集といったところか。〈美しい国のための提言〉という副題はどうかと思うが、宣長の言葉が平易な現代語に翻訳されたことは意義深い。ただしこれはあくまで宣長という人物が遺した功績の一部分にしかあたらないことは記しておきたい。冒頭から長々と本書には直接関係のないことを書いてきた。しかしそれは、“宣長の教え”というものが現在も脈々と受け継がれている場所があり、それに携わる人々が多く存在することを知ってほしかったからである。そう思いを馳せれば、たとえ平易な言葉で書かれていたとしても、本書をさらりと読み流すことはできない。おのずと襟を正したくなるというものである。 (*)原文では漢字表記 ★今回ご紹介した本は、「本が好き!」プロジェクトから献本していただいたものです。 ★「本が好き!」プロジェクトの詳細はこちら→http://www.buzz-pr.com/book/menu/ |
| Posted by kakerunakasima at 02:20:15 on 2010/09/04 |
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