ホンスミブログ
| 2007-07-12 |
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| 名づけえぬものに触れて()
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![]() 名づけえぬものに触れて
livedoor BOOKS 書評/エンタメ・タレント ![]() ![]() 数年前に柳美里の公式サイトがオープンしたと聞き、多少の驚きとともに訪れた。双方向性のメディアと柳美里という組み合わせが意外に思えたからだ。案の定、「サイトオープンにあたって」で彼女は開口一番〈わたしは機械が大嫌いです。〉と書いていて、いかにも柳美里らしいと感じ入った。しかしそれだけでは、彼女がなぜ“大嫌い”と言いながらも、サイトをオープンさせたかがわからない。やがて読み進むうちに、その理由が明らかとなった。柳美里がネットに深く関わるようになったのは、自死を遂げたある読者のサイトに深く関与するようになったことに端を発する。作家に限らず、著名人が自身のファンのページにアクセスし、しかもBBSで発言すること自体、かなり珍しい。 しかしその行為は、結果的に彼女に大きな負荷を与えることにもなった。そうした経緯を経て、複数の有志を得ながら、BBSを運営していた故人の遺志を継ぎつつ、柳美里は自らのサイトを立ち上げるに至る――つまり彼女のサイトは当初、自身と読者とのコミュニケーションよりも、故人との対話に重きを置かれたものであったといえる。そこで書き綴られてきたのが「名づけえぬものに触れて」と題された日記である。本書はその本文(2004年1月7日から2005年7月7日まで)に、一本のエッセイとインタビュー稿をあわせて収録したものだ。 とかくスキャンダラスな話題が先行しがちな柳である。本書も二つめのエントリからして、『8月の果て』打ち切りというトピックだったりするわけで、そこに記される感情の起伏は激しく、暗く、ときにヤケッパチに明るい。そう、意外にも本書の底に流れるトーンは、明るくて、おかしみすら感じさせる。滑稽という意味ではなく、幸せそうに見えるのだ。しかも日を追うごとに、文体すら変わってきている。なかには「これがほんとうに柳美里の文章なのか?」と思えるほど、はじけた文章に出くわす。 例えば、2004年09月24日のこんな記述。 〈そんなこんなで、本日から、1行でも毎日更新するようにします。 で、掲示板のほうには、しばらく書き込みません。 でも、あのぉ、わたくし、あそこの地縛霊だから、居ることは居ますよ。 1字も漏らさず読んでますよ。 誹謗中傷、カモーン!! ファックユー!! アッカンベー!! イーダ!! アーアイゴチュッケッター!! ボキャ貧作家の柳美里でした。 しかし、クシャミが止まらんぞ。 風邪ひいた。 眠る。 おやすみなさい。 バタンキュー……〉 そのほか、自転車で電車と競争したり、『命』のもうひとりの主人公だった息子とのほほえましい日常を活写したり(寝坊して何度も幼稚園をサボったり、ピンクのレオタードを着てダンス教室に通ったり……)、たしかに重苦しいエントリはあるにはあるが、それを上回るだけの幸福が、ここには垣間見える。また、機械が大嫌いなはずの柳が、旅先でエッジ(=AIR-EDGE)が繋がらないと嘆いたり、〈トラックバック、大歓迎でございます!!〉と書いたりしているのも、なんだかおかしい。ちなみに現在のサイトでは、携帯メールから更新できる日記が掲載されており、一日に何度もエントリーがアップされているのには驚いた。いつの間にか、ネットの達人になっていた柳美里である。 個人的に目を引いたのは、2005年01月12日の「water&flower&slight dirt」と題されたエントリ。ここで柳は、小学校4年生のときに、人知れずコツコツと「花係」を務めたエピソードを交えながら、〈花好きではないが、花を枯らすことは嫌いだ〉と綴っている。家には16の鉢植えがあるにもかかわらず、〈自分で選んで買った花はひとつもない〉という。こうした花との、微妙に距離を置いた付き合い方は、穿った見方をすれば、柳の人と人との関わりあい方をも象徴しているように思える。してみれば、ネット、あるいはブログを介した人との付き合いというのは、案外と柳の性に合っているのかもしれない。 【読了時間:2時間05分/305P】 ★今回ご紹介した本は、「本が好き!」プロジェクトから献本していただいたものです。 ★「本が好き!」プロジェクトの詳細はこちら→http://www.buzz-pr.com/book/menu/ |
| Posted by kakerunakasima at 02:20:10 on 2010/09/04 |
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